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作成日:2012/02/07
【判例】引き抜き行為をした元従業員の退職金は返還請求できるか?



【事案の概要】

  本件は、会社が元従業員らの従業員の引き抜き行為、または、競業会社への入社を理由に元従業員らに支払った退職金の返還請求をしたものである。

 会社の就業規則には、故意または重大な過失により業務上不利益を与えたときは、情状により減給、出勤停止、昇給停止、降格のいずれかにするとの規定があり、また、社員に対する不当な方法での退職強制、引き抜きもしくはセクシュアルハラスメントをし、またはそれらを行おうとしたときは、懲戒解雇にするが、情状により諭旨解雇とするとの規定がある。

 加えて、会社の退職金規則には「退職金は、懲戒解雇者は適用外とすること、退職金は、退職事由ごとの支給率は、自己都合退職者は会社都合退職者の2分の1以下となり、退職後2年以内に会社の許可なく同業他社に就職した者または同業の営業を行った者は自己都合退職者の2分の1となること、退職金を支払った後、懲戒解雇または退職後2年以内に会社の許可なく同業他社に就職したことが発見された場合は、支払った退職金の返還請求をすることができることが、規定されている。

 【裁判所の判断】

◎本件退職金返還条項は有効である

 会社は、退職金支払い後に、@懲戒解雇事由が明らかになった場合、A退職後2年以内に会社の許可なく同業他社に就職し、または同業の営業を行ったことが明らかになった場合には、支払った退職金の返還請求ができる旨定めている。

 会社の退職金規則を見ると、自己都合退職、会社都合解雇等の退職の事由により退職金の支給額に顕著な差異を設けており、会社における退職金が、功労報償的な性格を有している一方で、退職金の支給額は、退職時の賃金や勤続年数により左右されることからすると、賃金の後払いとしての性格も併せ有している。

 そうすると、退職金の返還は、労働者の権利に重大な影響を与えるものであるので、単に懲戒解雇事由等が存在するというだけで直ちに退職金の返還が認められるわけではなく、さらにそのことが、従業員のそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為がなければ、退職金返還義務を負わない。

 Aの場合、同業他社への転職禁止の範囲が広く、代償措置も講じられていない。しかしながら、退職金が功労報償的な性格を有する原告の退職金規則上、Aの場合に退職金の一部の返還を求めることができると定めることが、特に不合理なものではなく、あくまで退職金の返還条件を定めたのみであって一般に退職後の競業行為を禁止して従業員の職業の自由を不当に拘束するものとまでは認められない。

◎本件の退職金返還請求は認められる

 以上を前提に、被告らについて、原告の主張する本件退職金返還条項@またはAに該当する事由があるか否か、@に該当する場合に本件退職金返還条項に該当する事由が、それまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為と評価されるか否かについて検討する。

 元従業員らのうち、従業員の転職の引き抜き行為は、会社での地位を利用して積極的に新会社に移るよう勧誘行為を行ったものであり、社会的相当性を逸脱していないとする主張は認められず、就業規則の懲戒解雇事由に該当する。この引き抜きにより、会社から大量の転職者が出たこと、その結果、重要な取引先の取引がなくなるなどの事情に照らせば、いずれもそれまでの勤続の功を抹消してしまうほどの著しく信義に反する行為があったと認めるのが相当である。

 また、引き抜き行為はしていない者も、退職後すぐに、会社の許可なく会社と同業である新会社に就職したのであるから、退職金規則の適用を受け、退職金の2分の1相当額を返還すべき義務がある。
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